ご案内
Sは「公共料金の収納代行はSの店の信用にもつながる」と考え、現場に受け入れ可能な対策を研究するように指示を出した。
どうすれば店舗従業員の負担をなくして公共料金の収納が可能か。
Sでは手間のかからない料金収納の仕組みを考えることになった。
「Tの領収書に、普通の商品と同じようにバーコードを印刷してもらったらどうだろうか」Tが顧客に送る請求書に、名前、請求金額、営業所番号といった情報をバーコードに載せてもらい、顧客に渡す受領用紙をあらかじめ請求書に添付してもらう。
そうなれば店頭で普通の商品のバーコード読み取りと同じ感覚で、対応できる。
銀行の窓口なら顧客も行員も書類にいちいち氏名などを記入することになるが、その手間を省くことができた。
収納情報はSの情報ネットワークからTのホストコンピューターに随時送信される。
しましまのバーコードを付けるだけで、いとも簡単に問題を解決してしまったのである。
銀行であれば待ち時間も含めて十分程度はかかっていた公共料金の支払いが、「S」ならまさにおにぎりを買うような感覚で支払える。
Tの申し入れから8ヵ月後の87年10月、新サービスは始まった。
この公共料金の収納代行サービスがS銀行設立の芽であったことは間違いない。
土曜日、日曜日、祝日も関係なく、しかも都合のいい時間に公共料金などの支払いが可能なサービスを実現したSには、消費者からさらに利便性を求める声が寄せられていた。
Sは毎年、「1万人調査」と呼ぶ消費者アンケートを実施している。
90年代に入るとATMの設置を要望する声が年を追うごとに高まっていた。
ライバルチェーンの中には店内にキャッシングの機械を導入するところもあった。
Sも90年代前半から、ひそかに銀行とコンビニの相乗効果について検証を始めていた。
その舞台となったのが長野県だった。
Sは93年、長野県が地盤の812銀行と組み、「S」の敷地内に812銀行のATMを設置することになった。
全くの偶然だが、最初にATMを設置した場所はSの出身地、長野県坂城町だった。
812銀行は支店の再編を進めており、坂城町の支店も対象になっていた。
支店閉鎖に伴う利用者の利便性を確保するために、812銀行が自行のATMを「S坂城村上店」の駐車場に設けることになったのだ。
その後812銀行は長野県内にある一部の「S」の敷地内にATMを設置し、その設置場所の利用状況などを調べた。
コンビニやスーパーなど流通業界が改めて金融分野に強い興味を見せたのは、橋本龍太郎首相(当時)が金融システムの抜本的改革を迫る金融ビックバン構想を発表した96年ころのことだ。
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